空の少女と海の少年
◇海斗の気持ち
──闇に覆われた世界
魔界の黒い城の王の間に続く
長い廊下を蓮は歩いていた
ふとよく知る気配を背後に感じ
足を止めて振り向くが
そこには誰もいない
蓮は面倒くさそうに溜め息をついた
「アリス何?」
「あはっバレちった?」
誰もいなかったはずの
空間から現れたのは
ピンクの髪にゴスロリ服の少女
悪魔のアリスは蓮の前まで
歩いてくると笑顔になった
「なんで空と海を殺さなかったのー?」
「僕、春ちゃん気に入っちゃった〜。可愛いし素質あるし。」
だから殺さない
僕の物にするんだ
蓮が笑顔で言うと
アリスはさっきまでの笑顔を消しさり
不満そうに蓮を睨みつけた
「……あの子は¨空¨。魔神様の邪魔になる存在だよ。」
「強いやつは敵にするより味方にした方が楽だろ〜?それを言いに魔神様のとこ行くから、じゃあな〜。」
王の間に向かって歩いていく蓮の
後ろ姿を見つめるアリスは
春に嫉妬し、唇を噛んだ
今まで好きだったのに
いきなり現れた奴に
蓮を取られなきゃいけないの?
しかも……空?
ふざけないでよ!
「……蓮が殺さないなら私が殺す。」
アリスがクスリと笑って
闇に消えると蓮は呟いた
「……アリスに殺せる訳ないのに。」
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