空の少女と海の少年


「──楠木春ちゃんいるー?」


教室を覗き込んでそう言ったのは
イケメンと有名な三年生の先輩

俺達が顔を見合わせていると
先輩は春を見つけてこっちにきた


「君が春ちゃん?やっばい可愛いよねー。」

「……あの……何ですか?」

「ちょっと一緒に来てもらっていい?」

「すいません先輩。これから移動教室なんで。」


キョトンとする春の前に
奈々が立って淡々と言うと
俺と陸も先輩を睨みつけた

すると先輩は悲しそうに
本当にちょっとでいいから。
と眉を下げて頼んできた


「あ……春行ってくるよ?ごめんねっ、先に行っててもらっていい?」

「春がそう言うなら……。」


少し心配だったけど
春が大丈夫だよっ。って笑ったから
俺達は春と先輩を残して教室を後にした


「──春……遅いわ。」


予鈴が鳴っても春は来ない
授業が始まっても春は来ない

俺達は心配になって
腹が痛いとか、頭が痛いとか
嘘をついて教室を出て行った


嫌な胸騒ぎが止まらない


「春っ!!」


息を切らして開けたドアの向こう

3人の先輩に囲まれた春が
Yシャツを握り締めて震えていた


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