空の少女と海の少年
涙に濡れた瞳には光が無く
口にはガムテープが巻かれている
言葉を失った俺達を見て
先輩達はニヤリと笑った
「あーあ、来ちゃった。これからなのに。」
「授業サボって大丈夫なの?一年生ー。」
「何ならお前らも一緒にヤる?」
爆笑する先輩達を見て
俺達の中で何かが弾けた
拳を握り締めて俺は叫んだ
「ふざけんな!!」
ピシッと乾いた音がして
教室全体が冷気に包まれると
机や椅子や窓が凍っていく
先輩達は焦ったように立ち上がった
「な……なんだよこれ!」
「お前らが何なんだよカスが!!」
陸は先輩達を思い切り殴った
その拳は炎に包まれていて
先輩達は怯えて腰を抜かした
「早く消えて下さい。」
教室の隅で倒れる先輩達に
奈々は右手をかざして
そのままドアの方にフッと動かすと
先輩達はドアの向こうまで吹っ飛んだ
さすがにここまでやると
他の教室からざわめきが聞こえる
俺がYシャツを脱いで奈々に渡すと
奈々は頷いてそれを春に着させた
俺と陸は出た方がいいと思い
奈々に春を任せると教室を出て
溢れる気持ちをドアにぶつけた
凍りついて砕け散ったドアの欠片が
歪んで見えたのは溢れる涙のせい
「ごめんな…春……ごめん……。」
「………。」
春を守れなかった
何であの時止めなかったんだ
俺のせいで……春は……
目を押さえて泣く俺の肩を
陸は黙って叩いてくれていた
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