空の少女と海の少年
そんな毎日が半年続いて
風が肌寒くなってきた10月
それは、突然だった
「……春?」
部屋でごろごろしてた俺達の前には
久しぶりに見た春の姿があった
ショートだった髪も肩まで伸びて
細かった体は更に細くなっていて
俺達の知ってる春じゃないみたいだった
「春?どうしたの?」
「………い。」
「え?」
奈々が優しく聞くと
春は小さな声で言った
「海に……海に行きたいの。」
久しぶりに聞いた春の声は
少しだけ掠れていた
こんな時期に海?とか
色々な疑問は消し飛んで
俺達は親指を立てて笑った
「了解っ。」
俺がそう言うと春は笑顔になった
久しぶりに見た春の笑顔は
俺達の大好きな笑顔のままだった
「奈々っ!もう空飛べるくらいになっただろ?奈々の力で空飛んで行こうぜ!」
「奈々は空を飛べるの……?」
「任せなさい。春も一緒に飛べるわ。」
俺達はこの半年の間
密かに能力の練習していたから
もう十分に使いこなせるようになってた
もちろん、春を守る為に
奈々が水着を引っ張り出したり
陸が食料をたくさん買ってきたり
忙しく準備をする2人を見て
俺と春は顔を見合わせて笑った
準備が終わったのは夜中
園長とかみんなに見つからないように
俺達は荷物をまとめると
孤児院の屋上から飛び立った
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