空の少女と海の少年


それから俺達は
ひたすら南に飛んだ

途中飛行機とかヘリとかに
見つかりそうになったけど
やっとのことでタヒチに着いた

その頃にはもう
空は明るくなっていた

徹夜で飛んで疲れきって
真っ白な砂浜に寝転ぶ俺達に
おつかれ。とでも言うように
水平線から顔を出した朝日が
優しい光で俺達を照らしてくれた

言葉が出ないほどに
綺麗な朝焼けを見つめていると
ふいに感じた右肩の重み


「あら。」

「疲れたんだなー。」


奈々と陸と一緒に俺も小さく笑った

俺の右肩に頭を預けて
すやすやと寝息を立てる春が
なんか、めっちゃ可愛い

サラサラと流れる髪を撫でてやると
春は気持ちよさそうに口元を緩めた


「……可愛い。」

「あら、ずいぶん素直じゃない。まあ……無理もないわね。」

「久しぶりに楠木の寝顔見たなー。」


みんなで春の顔を覗き込んで笑った

多分だけど、この時俺達は
同じ事を考えてたと思う


春を守る。って


俺達に与えられたこの力は
その為の力だと思うから


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