スタッカート
外は、もう随分と暗くなっていた。
点滅する信号、横を通っていくたくさんの車。その車のライトに反射する、道路に立てられた丸い反射板。
目に映るものすべてが、何故かいつもとは違って見えた。
何となく落ち着かない気分のまま、肩を並べて、町を歩いた。
最近は夜になるとうんと冷え込む。私は上着を持ってこなかったことを心底後悔した。
すると、隣に立つトキは何も言わずに着ていた上着を私の肩に被せてくれた。
自分も寒いはずなのに…
こういった、いつもは意地悪なトキがたまに見せる思いがけない優しさが、私の胸をくすぐる。
上着からは、ほんのりと甘い匂いがした。
ありがとう、と呟いた私に、目を向けることも返事を返すこともなく、トキはズボンのポケットに手を突っ込み、時折周りの景色に目を移しながら、私の少し前をゆったりと歩いていた。