スタッカート
―どうせ、また迷子になるんだろうが。
着替えて戻ってきた私に、送る、と呟くように言ったトキは、私がぶんぶんと首を横に振ると半ば呆れ顔でこう言ってきた。
何度断っても譲らないトキに、諦めた私はそれから黙って目指すバス停へと歩いた。
正直なところ、今こうしてトキと町を歩いていることが夢のようだった。
私がトキを音楽室から追い出したあの日を最後に、もう会うことはないだろうと思っていたトキ。
まあヒナのおかげなんだけど…
いや、お陰とか言ったら私がトキに会いたかったみたいだし、とそんな自分の思いをかき消すべく激しく首を横に振る。
そんな私の様子に気付いたトキが、意地悪そうに笑って私の額にデコピンしてきた。
「何考えてんだ。変態」
へん……!
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