スタッカート

自分と同じ帰宅部の生徒にまぎれ、トキの高校へと続く道を歩いた。


私の通っている進学校と、トキの通っている農業高校。

この二つの高校は、割と近い場所にあるため、通り道が被ることが多い。

学ランとセーラー服。
チェックのスカートとブレザー。


全く違う制服姿の男の子と女の子が、同じ道を歩いている

…この光景が、私は好きだ。




しばらく歩いていると、美しい花壇と、見覚えのある校門が見えて来た。

その前で、制服のポケットに手を突っ込んで立っている、男の姿を見つける。

…なぜか。

冷えていた心に、小さな温かさが戻って来て


きゅっと固く閉ざしていた唇が、ゆるゆると緩んだ。

鋭い目と、視線が絡み合う。


トキは私の顔を見ると、眉間に皺をよせ顔を歪めてぼそりと零した。



「………間抜け面」



そんな一言でさえ、温かく聞こえるのだから――今日の私は、相当弱っているのかもしれない。

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