スタッカート


冷えた廊下を、お互い無言で歩く。

何もきかれないし、何も言わないでいい。

この長い沈黙が、心地良かった。


伏せていた目をあげて、前を歩くトキに、ちらりと視線を向ける。

窓から入り込む風を受けてさらさらと揺れる黒い髪、広い背中、長い手足。

あらためて見てみれば、トキはなかなか、スタイルが良かった。


「…おい」


そう不意に声をかけられて、肩がびくりと動く。

まじまじと観察していたことがバレたのかと、焦りで顔が熱くなった。

前を向いていたトキが、少しだけ首を捻って、横目でこちらを見てくる。
その顔は、険しかった。



「……あいつらに、余計なこと言われても、気にするなよ」




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