スタッカート

ピアノがあって、学校に通えて。

―…恵まれた環境にいながら
少しの事で、心が折れそうになっていたんじゃないか。

そうして。

辛くなって、ここに逃げてきてしまったのでは。


愕然と、した。



黙り込んだ私の顔を、ハチさんは遠慮がちに覗き込んできて。
心配そうな、揺れる瞳と目が合った。


「大丈夫?」

そう優しくきかれて、私はこくりと頷いた。

ハチさんは目を細めると、これが最後の一枚だよ、と嬉しそうに、手に持った紙をひらひらさせた。




……その時。




床を震わすような爆音が、耳に届いた。



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