スタッカート
ビニールハウスに近づくに連れて、心地よいギターの音が徐々にはっきりとした音で聞こえてきた。
さっきまで耳を突いていた、ざくざくと草を踏みしめる音も、今はそれにかき消されてしまっている。
私はビニールハウスの前に辿り着くと、一呼吸置いて、所々穴の開いたシートを持ち上げ、中を覗き込んだ。
三歩ほど離れた近い距離に、その姿は在った。
ビニールの壁をすり抜けて入り込んだ陽を受け、柔らかな光を纏う黒髪。
組まれた長い足。
弦を押さえる、骨ばった指。
視線に気づいたのか、伏せられた切れ長の瞳がゆっくりと上がって
やがて、二つの視線が絡み合うと
ギターの音が、止まった。