スタッカート
「…………」
トキは、暫く呆然としたようすのまま、固まっていた。
そんなトキの表情を見るのは初めてだったため、戸惑った私が一度ぱちりと瞬くと、トキはそこで我に帰ったように、いつもの冷めた表情に戻った。
「……何か、用かよ」
言いながら、表情がだんだんと険しくなっていき、最後は悔しげな表情で舌打ちをして、私から視線を逸らした。
その理由がわからない私は、何だか少しだけむっとしてしまった。
「……ハチさんが、これ、渡して欲しいって」
だんだんと、自分の表情も険しくなるのがわかりながらも、ぼそぼそとそう言って手に持ったルーズリーフをトキの目の前に出す。
トキは、眉間に皺を寄せてルーズリーフを眺めた後、更に表情を険しくして、低く唸るような声で言った。
「……あの野郎……」
その言葉と、表情の意味も
私には、わからなかったけれど。
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