スタッカート
そして、いつも通りの一日がやってきた。
退屈な授業を受け、お昼休みが始まる。
…けれど。
「伊上」
そう、佐伯に呼ばれて差し出された、音楽室の鍵を。
受け取るかで戸惑い、ごまついてしまった。
佐伯は、中々掌を出さない私に苛々し始めたのか、やがてはやく受け取れとでも言うように、私の手をとって乱暴に押し付けた。
眉をハチの字にして、目の前に立つ佐伯を見る。
しかし、その顔が、何故か苦しげに歪んでいたことに、私は動きを止めた。
「……負けんな」
ギュッと閉ざされた唇が動いて、ぼそりと、呟くように零された。