スタッカート
……負けんな?
首をかしげて、きょとんと、眉間に深い皺を寄せて、私からは視線を逸らしている佐伯を見つめると
再び、その唇が動いた。
「……清水に、何か言われたんだろ」
その言葉をきいた瞬間
私は、ああ、と納得した。
佐伯は
きっと
全て、知っているのだ。
もしかしたら、清水さんは以前も、ああいった話を何処かでしていたのかもしれない。
そうしてそれを、彼は耳にしたことがあるのではないか。
「この前……気分悪そうだったのも、それが原因か?」
黙り込んでいる私を見て肯定と捉えたのか、佐伯はそう続けて。
何となくそれに答えられなかった私は、只視線を落とすだけだった。
「弾くことを、やめるな」
そう言った彼は深いため息をついて、私の掌に納まる鍵に視線を移した。
「俺はお前のピアノがどれくらい良いもんか、ちゃんと知ってる。
…だから周りなんか気にしないで胸張って、自分の為に弾け」