スタッカート
鮮やかな夕焼けが、窓ガラスを通り抜けて教室に流れ込んでくる。
オレンジ色に染まった教室をしずかに見渡していたトキは、不意に私のほうに視線を向けて。
その手を伸ばして
私の頭に、ぽん、と大きな掌をのせた。
「……ありがとうな」
降って来た、包み込むようにあたたかな、その声に。
…じわりと、目元が熱くなった。
優しく、いたわるようなトキの声は続いて
「よくやったな。……逃げなかったじゃねえか」
視界が。
滲んで、揺れた。