スタッカート
「…か…海陽、くん…?」
覚えたての名前をぎこちなくそう口にすると、彼はくしゃりと笑った。
「はは!名乗ってもねえのに、もう覚えてもらったのか。」
そこで、私は目を見開いた。
……そういえば、そうだった。
彼から自己紹介をして貰ったわけではないのだ。ハチさんが、カイヨウ、と呼んでいたのを覚えていただけで。
「あらためて。柴高二年、柊海陽。歌とギターやってます」
銀のピアスの彼は改まった口調になると、そう深く頭を下げてきた。
私も慌ててそれにならう。
「ええっと…聖陸高校二年、伊上東子です。」
顔を上げると、口元に柔らかな笑みを浮かべた海陽くんと目が合った。