スタッカート
私の返答に、海陽くんは目を見開いて意外そうな表情をすると、小さく唸ってまた視線を前に戻した。

「あいつ、本当に………哀れな奴」

苦々しい表情で吐かれた海陽くんのそんな呟きは、最後のほうは爆音にかき消されて聞き取ることはできなかった。

そうやって、二人で並んで壁にもたれて、穏やかに、ステージを見つめていた。

しかし、そんな空気を壊すように、突然ステージの照明が全て落とされて、あたりが真っ暗になってしまった。

瞬間、背筋を冷たいものが走る。

……暗闇。

慌ててギュッと目を閉じて、唇を噛み締める。


背中から、ぞわぞわと鳥肌が立つ。
そんな自分を情けなく思い、同時に悔しくなった。

―まだ。

まだ、この感覚は消えていないんだ。

暫くそうしてよろけそうになりながらも立っていると、鼓膜を破りそうなくらいの歓声が耳に届いて


私はゆっくりと、固く閉じていた目を開けた。








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