スタッカート
思わず肩がビクリと跳ねて、私はそのままぐるりと背後を振り返った。
そこには、息を切らし肩を上下させて私を見つめる、トキが立っていた。
どうしてここにと目を見開くと、深い藍色の瞳と目が合う。
するとすぐにトキは苦しげに表情を歪めて、大きくため息を吐き大またでこちらに向かって歩いてきた。
「いきなりあんな顔して居なくなるから、探した……。
……何、してんだ」
その言葉に更に目を見開く。
探した?
もしかして、もしかしなくても、ライブを抜け出して?
――何故?
問いに応えようと口を開くのに、頭が混乱してうまく動かない。
焦り、詰まる私に、トキは眉間に皺を寄せると私から視線を逸らし、
「俺が……何かしたのか?」
と、掠れた声で訊いてきて。
あの「ひとり」と同じ響きの切なげな声に、私の胸の奥で何かが疼いた。
そしてそんな僅かな沈黙のなか、消え入りそうなくらい小さな佐伯の声が落ちた。
「……トキ…?」