スタッカート



横断歩道を渡り、色とりどりの花が植えられたいくつものプランターの前を通り過ぎる。

見慣れた校門をくぐって、校舎に入る。


ふたつの足音が、しずかな廊下に響いた。



「いきなり、ごめんね」


その声に、ハチさんの広い背中を見る。
ハチさんは振り返らずにため息をついて、ぽつりぽつりと零した。


「ダメなんだよね、アイツ」



窓を叩く雨音が、耳に届く。



「何言っても、ダメなんだ。まるで昔に戻ったみたいに死んだ目をして、何も見えてないみたいに自分の殻に閉じこもって」


言って、ハチさんは切なげに笑って。





胸が



悲鳴を上げた。





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