スタッカート



そのまま、女の子は連れて行かれて。

佐伯琢磨に引っ張られていく間、何度もこっちを振り返って、大きな瞳で俺のことを見ていたから、何となく気恥ずかしかったけれど手を振ったら、余計に泣きそうな顔をされた。


俺はそれから急いで家に帰って、家の中、両親を探した。でもやっぱり、誰も帰ってきていなかった。






……二週間が経った。




俺は、相変わらず誰も居ない家で、ずっとひとりで両親の帰りを待っていた。
朝起きて、学校のある日は急いで帰ってきて、休日は一歩も家の外に出なかった。


でもそうやって期待するたびに、現実は俺を裏切った。




朝、誰も居ない家が、ひどく広く感じて
ひとりで過ごす夜が、一番怖くて、寂しかった。


このまま、誰も帰ってこないんじゃねえかとさえ、思うようになった。





そして、そのうち。







親が置いていった金が、底をついた。






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