スタッカート
親の帰りを待って引きこもっていた休日も、外に出ることが多くなった。
ひとつひとつ、辺りを確認しながら部屋を回って、ベランダ伝いに部屋から部屋へ移動して、開いている鍵が無いか探した。
佐伯琢磨の妹とは、それから頻繁に会うようになった。
階段の隅っこだったり、人の家の前だったり、団地の中にある公園だったり。
どうやら家を抜け出すのは常習犯のようで、いつもぬいぐるみを抱えて泣きべそをかいていた。
だったら大人しく家に居ればいいのに……そう思ったけれど、俺の姿を見つけると駆け寄ってくるそいつを見ていたら、何だかそんな気も自然と失せた。
会えば遊びに付き合って、気付けば日暮れになっているときもあった。
他に友達は居ねえのか。
そうきいたら、いつもしょげて何も言わなくなるから、俺はそれを見て、本当は何処かで安心していた。
自分以外の「ひとり」を見つけた気がして。