スタッカート
何かが割れる音がした。
驚いて音のしたほうを見ると、校門から校舎を真正面から見上げたところにある二階の窓が割れていた。
少し大きめの窓はガラスが殆ど飛んでなくなっていた。
先ほどの静けさが嘘のように、あちらこちらから叫び声や怒鳴り声が聞こえる。
私は途端に怖くなって、すぐ傍に植えてあった大きな木の陰に隠れた。
心臓が激しく脈打つ。冷や汗が出て少しだけ足が震えていた。
たくさんの人の声、気配、足音がこちらに近づいてくるのがわかる。
「追えええぇえぇえ!!」
ドスの聞いた声がすぐ近くで聞こえ、思わず叫びそうになった。
おそるおそる木に隠れながら外に顔を出すと、鉄パイプやバットを持った人が校舎から物凄い勢いで出て行くのが見えた。
茶髪、金髪、ピアス、短ラン…数も半端じゃないし、いかにも悪そうだ。
私は、やっぱり来なきゃよかったとか、ヒナが言っていた言葉を思い出し「ちょっと」心配とかのレベルじゃない、だとか泣きそうになりながら考えていた。
ガサっと、背後から地面を踏む音がして、心臓が爆発寸前だった私は思わず叫び声をあげる。
「あれ、……ライブの子だ。」
振り返った視線の先には、花の苗がたくさん入った箱を抱えた勇太さんが立っていた。