スタッカート
「…近づきたいって、言われた」
ぼそぼそとそう言うと
ヒナは、やっとかあ、と呟いてにんまりと笑って。
その反応に、私は眉をよせて首をかしげたけれど、ヒナはこちらには目を向けず、窓の外を眺めながらうんうんと頷いた。
「トキくん、わかりやすすぎだもん。
いったい、いつになったら言ってくれるのかなあなんて思ってたし、はたから見ててもちょっと苛々してたのよ。
でもまあ、トキくんって意外と――」
そこで
ヒナは何の反応も返さない私を怪訝に思ってか、途中で言葉を切り、ゆっくりとこちらに視線を戻してくる。
きょとんとしたままの私に気付き、大きな目がぎょっと見開かれた。
暫く、気まずい沈黙が流れる。
ひとつ咳払いをしたヒナは、眉間に皺を寄せ、もごもごと遠慮がちに口を開いた。
「……いくら東子でもありえないという前提で取・り・あ・え・ず聞いておくけど、まさか“近づきたい”って言葉の意味を“友達として仲良くなりたい”だと勘違いしてる……わけじゃないわよね!?」
その言葉に。
……私は、こくりと頷いた。