スタッカート
「遅っ!!今更気付いたの!?」
きっと真っ赤になっているであろう自分の頬を両手で押さえ俯く私に、ヒナは盛大なため息とともにそう言って。
私は、ぶんぶんと首を横に振った。
「いやいやいや!ありえないから!わー!駄目ー!!」
「……東子、落ち着いて」
若干引き気味の表情になったヒナが、腕を伸ばしてきて私の背中を優しくさする。
「だって私が、トキのことを好きなんて…」
と、もごもごと零す私に、ヒナはちょっとだけ笑って、言った。
「駄目とか、ありえないとか、そんなこと無いよ。だってトキくんの言葉を、もう一度思い出してみてよ。……意味、分かるでしょう?」
トキの、言葉。
整理できずにぐちゃぐちゃになった頭の中から、記憶を探す。
“会うたびに、知らないお前を知るたびに――”
丁度、その時だった。
地面が揺れる程の大きな振動とともに病室のドアが開いて、
両腕に大きなビニール袋を提げたハチさんが、満面の笑みを浮かべて現れたのは。