スタッカート
「ちょっ…東子ちゃん、わかってはいたけど鈍すぎ!!」
話を一通り聞き終えたハチさんは、そう……吹いた。
「いやー、俺は、トキの気持ちに気付いていながら、あえてわかっていないフリを通してたのかとも思ったけど。でも、まさかねえ、考えてみたらそんな器用なタイプじゃないよね」
「……今、さりげなく結構傷つくこと言いませんでした?」
「いや。事実だから、東子。」
眉間に皺を寄せてヒナを見ると、軽く笑われて。
…何だか、少し、悔しくなった。
「まあ、何はともあれ、ね」
器用に、持参の果物ナイフを操りながら林檎の皮を向くハチさんは、穏やかな微笑みでぽつりと言った。
「これであいつも、肩が軽くなっただろう」
その言葉に首を傾げる私に
柔らかな微笑のまま、ハチさんは小さく頷いて。
「俺もすごく、嬉しいよ」
と、照れたように、鼻の頭を指で掻いた。