スタッカート


「いやぁ、びっくりしたよ」


そう言ってけらけら笑う勇太さんは、校門の前に置かれたたくさんのプランターに花の苗を手際よく植えていく。


「まさか傘返すためにわざわざこんなところに来るなんてね。まあ待ってる間に何もなくてよかったね」


「……危なかったですよ」

私も制服の袖をまくって作業を手伝いながら深くため息をついた。

そんな私を見て勇太さんはさらに笑った。


「まあ、ああいうのあまり見たことないみたいだし、そりゃあびっくりするか。でも皆普段は優しいんだよ」

今日の騒ぎは特別だったから、と小さく付けたす。

何があったのか少し気になったけれど、知ってしまうのもなんだか怖い気がしてきけなかった。


それからヒナが来たのはチャイムが鳴ってから15分ほどたってからだった。
髪を振り乱して物凄い形相とスピードでこちらに向かってくるヒナの姿が見えたとき、私は何だか安心して少し笑った。



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