スタッカート
夕焼け色に染まるアスファルト。
点滅する赤信号。
少し冷えた空気の漂うその景色の中を、ハチさんと二人、肩を並べて歩く。
「奇遇だね。方角が一緒なんて」
そう言って笑ったハチさんは、黄金色に染まる景色に目を細めた。
「俺、この時間帯の景色が好きなんだ。黄金色とか橙色ってすごく温かい色で、何か見ていると安心する」
視線を追って、私もまた目の前に広がる景色を見渡す。
すべてを染め上げるその色は
深く、温かく。
少しだけ、トキの過去を聞いたあの日、胸に生まれた「しこり」が薄れていくような気がした。
だから、なのだろう。
気付けば、唇が動いていた。
「……ずっと、考えている事があるんです」
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