スタッカート
目を見開いて隣に視線を向けると、柔らかく微笑むハチさんがこちらを優しく見つめていた。
目が合うとゆっくりと視線を前に移し、何か遠いものでも見るように微かに目を細め、ハチさんは話し始めた。
「…俺、高校入るまで−−つまり地元に居たときは、結構ワルい子供だったからさ、元警察官のトキの叔父さんには色々世話になってたんだ。
あいつが叔父さんに引き取られて、叔父さんの家に来て……
ほぼ毎日、叔父さんの家に入り浸ってたから自然とそこで知り合って、何時の間にか仲良くなった。
…それから暫くしてあの話を聞いたんだけど」
そう、ハチさんは小さく唸って俯いたあと、息を吐き顔をあげて、口を開いた。
「話しを聞いた当初は、俺も東子ちゃんと全く同じ考えだった。
何でこいつが、ここまで苦しまなきゃなんねーんだ、って。
だけど、同じ高校に通うようになって、前よりもっと、アイツと関わるようになって
少しずつ、考え方が変わっていったんだ。
……確かに、東子ちゃんの言うとおりかもしれない。アイツはいきなり親に置き去りにされて、一人で生活しなければならなかった。頼る人も居なかった。仕方が無いことだったのかもしれない。
……けど
アイツの罪は、本当にそれだけなのかな?」
え、と思わず声を漏らす私に、ハチさんは困ったように笑って頭を掻いた。