スタッカート
「…それは、アイツの心にも深く残っているんじゃないかな。
現に高校に入ってもずっと人付き合いを避けていたし、なかなか他人に心を開かなかった。
だけど俺が無理矢理軽音に入れてからは、音楽をやっていくうちにだんだんとそういう壁みたいなものが薄れていってさ。
少しずつ、笑うように、人と関わっていけるようになったんだ。
…だけど
佐伯君と再会したことで、自分の罪を再確認して――東子ちゃんとのことも、このまま関わりを持ち続けることで、また、傷つけることになるんじゃないか…そう、不安になったのかもしれない。
それで、距離を置くことにしたのかも…」
ハチさんは眉間に皺を寄せて、大きなため息とともに吐き出した。
「…だけど、もしそうだとして…傷つけたくないから拒絶する、関係を絶つっていうのは、逃げだと思うんだ。
大事にしたいのは分かるけど」
そう言って、私の頭をポンポンと叩いて。
黙り込んだ私に困ったような笑顔を向け、手を下ろし、また空を見上げた。