スタッカート
「東子!ごめ…ごめん!今日に限って先生に捕まっちゃって…って勇太先輩じゃないですか!!」
息切れしながらもオーバーなリアクションは健在で、大きな目をさらに大きく開き、飛び上がりながらヒナが言った。
勇太さんとヒナは結構顔見知りのようで、二人は仲良さげに話を始めた。
結局三人で花植えの作業をしながら、ヒナがライブの常連で、それがきっかけで勇太先輩と仲良くなったことを二人の口からきいた。
「前やってたバンドが、メンバーの退学とかで解散しちゃって」
手を土だらけにした勇太さんが、肥料をぱらぱらとまきながら独り言のようにぽつりと言う。
「まあそれから助っ人ってかんじでいくつかバンドを掛け持ちしてたんだけど、そんなふうに適当に音楽やってた時にトキとバンド組む事になってね。それから…なんか俺の中のいろんなもんが変わって、前よりもたくさんライブに出るようになったんだ。そのあとぐらいから、ヒナちゃんと話すようにもなったんだけど。」
「色んなものって…?」
「何て言ったらいいのか、いまいちよくわかんないんだけどね…考え方とか?」
そう言って、困ったように笑った。