スタッカート



…妹?


目を見開いた私に佐伯は少し頬を赤くしたけれど、すぐにその表情をひっこめて、ぼそぼそと零した。


「歳のわりに小さいしすぐ泣く奴で、たまに遊びに行ったと思ったらいつもクソガキ共にいじめられてて。

それから…もともと人見知りが激しいのが災いして、どんどん外に出ないようになったんだ」


そう話す佐伯の横顔は、私がいつも見ている「佐伯琢磨」とは、少し違う表情で。
私は暫くその表情を眺めて、気付いた。


これは…「お兄ちゃん」の顔なんだ、と。


佐伯は撫でるように、鍵盤に指先を滑らせながらしずかに続けた。



「そんな妹が、ある日突然家から消えたんだ」





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