スタッカート
うねるようなベースの音と、地面に響くドラム。
続いて、それにギターの音色が重なって―
足を止めた私の横を佐伯が怪訝そうな顔で通り過ぎ、我に返って再び階段を上った。
上りきり、右に曲がる。
この廊下の先に、部室がある。
窓つきの見慣れたドアが見え、私はゆっくりとした足取りでそこへと向かった。
だんだんと窓の向こうの人影が色を成していき、何故なのか心臓がやたら五月蝿くなった。
しかし、ドアまであと三メートルほどのところまできた、そのとき。
先に進もうと足を前に出した私の腕を、斜め後ろに居た佐伯が掴んで、止めた。
驚きで肩がびくりと跳ね、背後を振り返る。
でも、佐伯は私を見てはいなかった。
彼の視線の先にあるのは、…ドアの、窓。
いや
その向こうに見えた、ギターをかき鳴らし歌う、トキ。