スタッカート
廊下で、じっと窓の向こうのトキを見つめていた佐伯。
その姿を思い出す。
…あのとき、佐伯は
きっと初めて「いま」のトキを見たんだ。
「いろんな話を聞いた。
団地を出てからたくさんの人と関わって、音楽と出会ったこと。
仲間を見つけたこと…」
視線がゆっくりと移動して、私に向けられる。
「守りたいって思う奴に、出会えたこと」
―守りたい奴。
その言葉が、胸を叩く。
この痛みと、じわじわとひろがるあたたかさは、いったい何なのだろう。
佐伯は少しだけ、まぶしそうに目を細めると、再びグラウンドへと視線を戻して、小さく息を吐いた。
「…こいつは色んなことにぶつかりながら、色んなことを吸収しながら成長したんだ、そう思った。
罪を抱え込んで、それでも少しずつ、自分の力で。
……だから、
話を聞いているうち
自分が凄く恥ずかしく思えてきたんだ」