スタッカート
部室は意外と広かった。
名前も知らないたくさんの機材、楽器、ぼろぼろのイス、埃をかぶったグランドピアノ。
私の学校の、整ったかんじの音楽室とはまた違った雰囲気。
私は、トキに座れといわれたイスに腰を下ろして、ゆっくりとそれを見渡す。
音楽といえばピアノで、音楽をやる場所といえばピアノ教室かホール…そんなイメージしか無い私にはとても新鮮な光景だった。
「そんなに珍しいの?」
私の視線を追って勇太さんが微笑みながら言った。
「ピアノ以外の音楽って、あまり知らなくて。」
「そうなんだ?じゃあライブも初めてだったの?」
「はい。…なんかみんなのノリについていけませんでした」
私は、ライブでの周りのハイテンションなノリを思い出す。絶対自分には無理だと思った。