スタッカート
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どれくらい、時間がたったのだろう。
私はフリーズしたまま、トキを見つめていた。
はじめは穏やかだったトキの顔が、だんだんと怪訝なものに変わっていく。
頬に触れていた手が引っ込められて、重く息を吐かれて――
「言った意味、わかるよな?」
そんなことを、真顔で言われた。
途端、何かの魔法が解けたかのように肩が跳ねて、私は自分の顔がみるみるうちに熱をもっていくのを感じた。
「わ、わわわわ…っ…わか、ってます、けど」
「けど?」
眉間に皺を寄せて、こちらを見上げてくるトキの顔は、何処か不安げで。
私は慌てて、顔の前で手を横に振った。
「いや!違うの!!トキが嫌いなんじゃなくて!」
「……」
「ほんとそういうことじゃ、ないんだけど…」
どこからか、不穏な、重い音が聞こえてくるように、トキの周りには負のオーラが渦巻いていって。
私はさらに強く、首を振った。
今度は自分も椅子から降りて、トキの顔を覗きこむ。
「ほ、ほんとに私でいいの…?」
瞬間。
手を掴まれ、力強く引き寄せられた。