スタッカート
私とヒナは10年以上の付き合いだ。

でも、お互い、相手のことは相手がしゃべらない限りは無理に聞いたりしない。

たいていの事は、言葉にはしなくてもずっと一緒にいたせいでわかってしまうからだ。

先生に目をつけられている、というのは少し気になったけれど、
ヒナがいつか話してくれるのを待てばいいか、なんて私は思い、ふと視線に気付いて俯いていた顔を上げた。


眉間にしわを寄せたトキと目が合う。


「つーかお前、何しに来たんだ?」


私は黙って床に置いていた傘をとって、トキの前に突き出す。

トキは怪訝な顔をして傘を眺めて言った。

「まさか傘返すためにわざわざこんなところにきたのか?」

「だって、家の場所思い出せなかったし」

「…そうじゃねえだろうが。」

そう、呆れ顔でため息をつかれ、私はトキの言いたいことがわからず首を傾げた。
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