スタッカート
何時か藤森先生が言っていた、感情は音にあらわれる、ということをひしひしと感じながら、私は弾き続けた。
―鍵盤は叩くのではなく、優しく押すように。
―音と対話するように。
過去に聞いた言葉を思い出しながら、音を紡いでいく。
すると、まるで生みだされる一音一音に色があるように、世界が色に染まっていく感覚を覚えた。
赤、白、桃色、黄色―……
溢れたイメージに色が重なり、音により表情が与えられる。
終盤、音は加速と減速を繰り返す。
ときに激しく、ときにゆるやかに。
雄大な自然を、音で描きながら。
――私は、最後の音を弾いた。