スタッカート


しん、と静まり返る練習室。
深く息を吐いて、掌で頬を押さえた。


顔が、いや、体中が熱かった。


弾く前は冷えていたはずの指先は、それを忘れたかのように熱く。まだ弾き足りないのだと言うように、鍵盤の上で震えていた。
興奮が冷め切らずに、ただドクドクと心臓が脈を打って。
それを耳の奥に聞きながら、ふと視線を感じて後方を振り返った。



そこには、ぱちぱちと手をたたきながら、満面の笑みを浮かべているヒナが立っていた。






< 366 / 404 >

この作品をシェア

pagetop