スタッカート


開かれた視界の向こう。
見えたのは、きらきらと光るマイクと、ドラムセット。

室内に流れる音楽の重い低音が足から伝わり、その感覚についこの間も来たというのに何処か懐かしさを覚えた。

初めに来たときよりも少しだけ体に馴染んでいるこの場所の空気を、ゆっくりと確かめるように、感じる。

目を伏せれば、とくんと胸が鳴った。

―出番は、終わってしまっただろうか。

そう心の中で不安を吐き出すと、タイミングを図った様にポンと肩を叩かれた。振り返った先に居たのは、悪戯っこのように笑う海陽くん。

あ、と目を見開いて少し頭を下げる。
彼も、何処か照れくさそうな笑みへと表情を変えて、ぺこりと頭を下げた。


「丁度、今からだよ」


目を細めて言われた、その言葉の意味は。
ステージから聞こえた、空間を切り裂くようなギターの音で、理解できた。

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