スタッカート

ライトが、トキの黒髪をやわらかに照らす。
骨ばった指先が一音一音を丁寧に紡ぎ出していく。
柔らかな声はささやきかけるように、優しく心に響く。

その姿も、声も。

ただ、きれいだと、思った。

ピアノしかやってこなかった私は、そのほかの音楽の知識はほとんど持っていない。

けれど、生み出される音、耳に届く声は、心を包んで、こんなにも胸を熱くさせる。それがどれほど素晴らしいことかなんて

誰かに説明される必要もなく、分かる。


伏目がちに歌っていたトキは、最後の音を弾き終わるとしずかに顔をあげた。
その目はまた、私を捉える。
何も返せずにただ見つめ返すだけの私に、少しだけ、はにかんだように微笑んだ。







そして

それから二曲を演奏し、彼らの出番は終わった。






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