スタッカート
え、えええ!!
驚きで頭の中が真っ白になっている私を放って、腕をぐいぐいと強い力で出口に向かって引っ張られる。
驚いたように目を見開いて私とトキを見つめる人がたくさん居て。
それが前列にいた観客の人たちだと分かり、余計に恥ずかしくなった。
待って、とか何処に行くの、ときいても、トキは振り返ってくれない。
―だったら、なんだ。
さっきのトキの言葉が胸の中でこだまして、強く跳ねた心臓が足を止めた。
怪訝そうにやっと私のほうを振り向いたトキも、足を止める。
真っ直ぐに私を見つめてくる瞳に鼓動をはやくさせながらも、渇いた喉から声を絞り出す。
「さ、さっきの…」
「さっきの?」
「あの、歌の歌詞のこと」
「ああ…」
そろそろと上目遣いに見上げれば、それが何だというように眉間に皺を寄せ首をかしげたトキと目が合う。
彼は数秒そのまま動きを止めると、徐々に口角を上げていく。その、微笑みとは違う意地悪そうな笑みに、嫌な予感がしつつ次の言葉を待つと、
「まさかお前、照れてんのか」
と、小馬鹿にしたように言われた。