スタッカート

かっと顔が熱くなって、顔の前で手をぶんぶんと横に振る。

「…ちっ…違う!!それは無い!あり得ない!!」

「じゃあ嫌だったのか?」

「い、いやそういうわけでは…」

…って。

ああああ…

また、

「おもしれー」

彼のペースに、のまれた。

くくく、と喉の奥で笑う声が耳に届き、恥ずかしさと悔しさで顔が余計に赤くなるのを感じながら、眉間にぎゅっと皺を寄せて、目の前に立つトキを見る。
彼はさっきよりもさらに意地の悪そうな笑顔を向けて、私に向かって手を伸ばしてきた。

反射的に体を強張らせるとそれさえも笑われて、また腕を取られて。


きっとこれからも一度だって勝てない。


悔しいけれど、そう認めるしかなかった。




< 388 / 404 >

この作品をシェア

pagetop