スタッカート

彼の瞳はいつも、私をとらえて離さない。

吸い込まれるように綺麗な目は、一瞬まぶしそうに細められて、ひとつ、瞬きをした。


そのとき。
私は、胸の奥で、何かがパチンと弾ける音を聞いた。


鼓動とは違う、なにか。
触れれば、あたたかくて切ない気持ちになる、なにか。


深い藍が、だんだんと近づき
長い睫毛が落とす、薄い影が見えた。

耳に届くかすかな息遣いが胸をくすぐって、自分から手を伸ばしてしまいそうになる。


彼の背後に、雲から顔を出した月を見つけたとき――



私は、自分の唇に知らない温もりを感じた。





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