スタッカート
校門を出ると、あたりはすっかり夜の景色で、
闇の深さがさらに私の心を沈ませていく。


「じゃあ…案内してくれて、ありがと」


そう言ってトキの顔も見ずに、校門に背を向けて歩き出す。
…きっとトキは、苦々しい顔をしている。

そう思うともう、どこまでも心は沈んでいった。




―もうここには来れなくなるんだ。

私は、今日初めて入った少しホコリっぽい軽音部の部室の中、はじめて目にする楽器や、ピアノの上にのってギターを弾いているトキの後ろ姿を思い出した。

すごく寂しくて切ない気持ちになるのは何故だろう。


小さく感じる胸の痛み。
気付かない振りをして、私は駅に向かった。



―そして。

落ちた気分のまま家に着いて、朝を迎えた。


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