スタッカート
私は、待ち合わせの一時間前になっても準備をする気になれなかった。そんな私の気持ちを知ってかヒナから電話がかかってきた。
少しげんなりした気持ちで電話に出る。
「…はい。」
「もしもし東子!?ちゃんと準備してる?」
「……ごめん。まだ…。なんかやっぱ…行きたくない」
「そんなこと言わないでぇぇ…」
ヒナの泣きそうな声。私はその声に弱い。
「わかったわかった!今から準備するから!」
そういって電話を切って、適当にその辺にあった服を着て待ち合わせ場所へ向かった。
賑やかなその場所で、ヒナが来るのを待つ。
傾いた夕日が、地面や人や建物をオレンジ色に染めていた。
朝から晴れていた空を見上げて、今朝見たニュースを思い出す。
…今日は一日中雨が降ると言っていた天気予報は、嘘つきだ。
それから少しして、背後からヒナが私を呼ぶ声がした。
「東子!よかった!来ないんじゃないかと思ったよ」
本当に嬉しい、というようにヒナが満面の笑みを浮かべる。
「当たり前でしょ」
迷っていたことを隠して、私は笑った。
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