スタッカート


ライブハウスは、待ち合わせ場所から歩いて10分ほどのところにあった。

このビルの三階にあるんだとヒナが古びた小さなビルを指して、私を案内した。






3階へと上がるエレベーターの中は、私と同じくらいの男の子と女の子でいっぱいだった。

何となく不安になりながら、気を紛らわそうとエレベーターの外の景色をガラス越しに見る。

いつの間にか外は暗くなっていて、車や建物の沢山の光をそこに浮かびあがらせていた。





目的の場所には、すぐに着いた。

エレベーターを出るとき、私のほうを心配そうに見つめているヒナの視線に気付き、「大丈夫だよ」と笑いかける。

ヒナもまた安心したように、笑った。



中に入ると、予想通り、そこは人で溢れていた。


ざわざわと騒がしい室内を明るめの照明が照らし、ライブハウスの全体を私に見せる。


入ってすぐのところに四つのソファがあり、座って見られるのはそこだけのようで、あとはただの床が続いていて、一番奥にステージがあるのが見えた。

ステージと観客が立っている場所との間は少しの段差しかない。


一番前の人は、至近距離で見ることになるんだろう。




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