スタッカート
4
懐かしい道を、私は歩いていた。
ゆっくりと、確かめるように一歩ずつ歩いていく。
先ほどから、頭の中で繰り返されるトキの言葉と、六年前のあの日いわれた全く同じ言葉が、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。
気を抜けば涙が溢れそうだった。
私はそれを誤魔化すように、せきとめるように、鼻をかるくすすり、以前見た時と何一つかわらないその景色を眺めていた。
灰色の家、たくさんの信号、横断歩道ではしゃぎまわる小さな子供たち。
懐かしい景色とすれ違いながら、いくつもの角を曲がり、辿り着いた一軒の家。
表札を確認して、私はひとつ深呼吸をしてインターホンを鳴らした。
「…東子です。…ヒナさん、いらっしゃいますか」