スタッカート


懐かしい道を、私は歩いていた。


ゆっくりと、確かめるように一歩ずつ歩いていく。

先ほどから、頭の中で繰り返されるトキの言葉と、六年前のあの日いわれた全く同じ言葉が、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。

気を抜けば涙が溢れそうだった。

私はそれを誤魔化すように、せきとめるように、鼻をかるくすすり、以前見た時と何一つかわらないその景色を眺めていた。


灰色の家、たくさんの信号、横断歩道ではしゃぎまわる小さな子供たち。


懐かしい景色とすれ違いながら、いくつもの角を曲がり、辿り着いた一軒の家。


表札を確認して、私はひとつ深呼吸をしてインターホンを鳴らした。


「…東子です。…ヒナさん、いらっしゃいますか」
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