スタッカート
沈黙が流れた。





「…仕事…、してたの」







沈黙を破り、ヒナが小さな声で話し始める。

「…いつも町で、相手探してて。あの日、いつものように道に立ってたら声掛けられて、ついていったら公園でたくさん殴られて…。逃げようとしたけど、今逃げたら殺すって言われて。」

ヒナがアザで青くなった頬を手で押さえ、もう片方の手で両目を隠した。とめどなく溢れ出る涙が、最後に見たときよりもずっと肉が落ちたヒナの頬を伝ってその膝の上に落ちていく。


その「仕事」がどんなものなのか―

分かってしまったことが、苦しかった。

ヒナの傍にいき、その細い指を両手で包む。

「…なんで、そんなことしたの…」



声が震えた。なんで、どうして、どうして、ヒナが―…同じことばかりが消化しきれないで頭の中を駆け巡る。
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