スタッカート
ステージにぽつんと置かれたグランドピアノへと、おぼつかない足どりで進み、イスに座った途端、私の頭は真っ白になった。



指が、動かない。




頭の中で、何度も繰り返される言葉。

「音が死んでる」


駄目だ、指を動かさないと―私は震える指を鍵盤の上に置き、必死に動かそうとした。
でもぴくりとも動かない。

どうして

どうして。


やがて静かだった観客も、そんな私の様子にざわつき始めた。


じわりと熱くなってく両目で、ゆっくりと会場を見渡した。



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