スタッカート
男の人は、私よりひとつ上か同じくらいに見えた。


にっこりと笑って、観客を見渡しながら言う。

「今日は柴農軽音部のライブに来てくれてありがとう!俺ら三年にとってはこれが最後のライブだけど……」

そして一息置いて、

「今日はめいっぱい楽しもうぜ!」

その言葉に答えるように、さっきまで静かだった周りの観客が、一斉にこぶしを突きあげ、歓声をあげた。

私はその声の大きさに驚き、また体をビクッと強張らせた。

隣にいたヒナが、興奮したようすで私の手を引っ張る。

「東子!最前列いこうっ!」

私はとっさのことに反応できず、そのままヒナに腕を掴まれ引っ張られながら、たくさんの人の間をぐいぐいと進んだ。


そして、ヒナと私が一番前のど真ん中にたどり着いた




その瞬間




爆音が、ライヴの始まりを告げた。



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